第39章

彼女の興奮とは対照的に、

稲垣栄作と内田先生の対面は、水面下で静かに進んでいた。一方は音楽界の狐、もう一方はビジネス界の大物。二人とも全身の鋭さを隠していた。

酒が半分ほど進むと、内田先生は早速貧乏話を始めた。

「稲垣社長に隠し立てするつもりはありませんが、今は音楽の世界は厳しいですよ。私の名前は確かに知られていますが、国内で本当に腕を振るおうとすると難しい。今はクラシック音楽が見向きもされない。あの成金たちはみんなオーディション番組に投資してる。腕や太ももを見せれば誰だって喜ぶでしょう?もちろん、稲垣社長は彼らとは違います。稲垣社長は趣味の良い方ですから!」

それを聞いて、稲垣栄作...

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